強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「藤太くん、また無茶したようです」
ある日の夕方。
久しぶりに散策しようと庭へ出ようとしたところで、田中に声をかけてきた。
田中や他の使用人に、わたくしは施設で問題があればすぐに報告するよう定期的な調査を依頼していた。
「何かあったんですの?」
私が尋ねると、田中は軽く頭を下げながら口を開いた。
「施設の子が、学校帰りに不良に絡まれたそうです」
「それで藤太が止めに入った、ということですか?」
「おっしゃる通りです」
胸がざわついて、上から手で押さえた。
「怪我は?」
「子どもも藤太くんも重傷ではありません」
「怪我はしたのね」
「はい。ですが……藤太くん本人が『大したことない』と手当てを拒んだそうです」
わたくしは思わず眉を寄せた。
藤太と初めて出会ったときのことを思い出す。
怪我をしているのに、自分のことを後回しにしてしまうのが癖になってしまっていた。