強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
パッと見、怪我はしていない。
安心して胸を撫で下ろしたけれど、言わねばならないことがある。
「今日、不良に喧嘩になったそうですわね」
「……聞いたのか」
静かに佇む田中を横目に、藤太はバツの悪そうな顔をした。
「ええ」
「……チビたちに絡んでたから、それだけ」
「だからって、あなたが出ていく必要はありまして?」
「あったよ」
あっさりと、何でもないことのように答えた。
「俺が何もしなけりゃ、チビたちが殴られてた」
「あなたが怪我をするかもしれないでしょう?」
「あいつらが怪我するくらいなら、俺が怪我したほうがいいに決まってる」
あまりにも自然に言い切られて、言葉が出せなかった。
「藤太……よくお聞きなさい」
「だから──」
「傷つくあなたを見て、施設の子たちや職員の方々はどう思う?」
今度は藤太が返事につまった。