強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「瞳」


 藤太の声がするりと入ってきた。


「大丈夫?」

「……何ともありません」

「顔がすげぇことになってるぞ」

「あなたのせいですわ! こんなことに巻き込まれて!」

「それ、俺のせい?」


 こんな状況だというのに、少しだけ笑いそうになってしまう。

 けれど、その瞬間。


「だからイチャつくな!」


 のっぽがまた突っ込んできた。


「はっ……!」


 避けようとして──間に合わなかった。

 腕に衝撃が走る。


「くうっ……!」


 身体がよろめく。


「瞳!」


 藤太が前に出た。


「やめろ!」


 普段は穏やかな藤太の一喝に、のっぽが一瞬ひるむ。


「もう帰れ」

「うるせえ!」


 のっぽが駆け出す。

 藤太は真正面から受け止めず、一歩横へと最低限の動きで避けると腕をつかんだ。

 そのまま上手く勢いを利用して、地面へ転ばせた。


< 59 / 182 >

この作品をシェア

pagetop