強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……っ」


 息を切らした藤太が振り返る。

 一瞬だけ泣きそうな顔をしたけれど、すぐ険しい顔になる。


「怪我は?」

「ありません」

「してるだろ……ごめん」

「あなたが謝ることではありませんわ……勝手に出てきたのはわたくしですもの」


 二人で顔を見合わせて、どちらともなく微笑む。

 そのときだった。

 屋敷のほうから、声が聞こえてきた。


「お嬢様!」


 使用人たちの声だ。田中はちゃんと動いてくれたらしい。

 別の方向からはサイレンが聞こえてきた。

 不良たちが慌てて顔を見合わせる。


「……ヤバいぞ」

「警察呼ばれてんじゃねぇか!」

「どうする?」


 さっきまで殺気立っていた彼らの顔に、動揺と恐怖が浮かぶ。


「くそっ!」


 金髪が地面を蹴った。


「覚えてろよ!」


 坊主頭がよくある捨て台詞を残して、一斉に駆け出す。



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