強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 怖い。恐怖がずっしりのしかかってくる。

 でも、それ以上に。


「大丈夫ですか……?」


 ガクガクしそうになる足を動かして、わたくしは駆け寄った。


「……もしもし?」


 恐る恐る肩に触れる。濡れてないのにひどく冷たくて。


「……っ」


 血の気が引いた。まさか……!


「ちょっと……!」


 わたくしは慌てて肩を揺すった。


「起きてください!」

「……触るな」

「きゃっ!」


 突然、男の子が目を開けた。


「……!」


 わたくしは思わず後ずさった。

 鋭い目は髪色と同じ濃い茶色をしていて、射抜かれてしまいそう。

 だけど浮かべる色は、敵意よりも警戒だった。


「……帰れ」


 少年が低い声で言った。


「何、を」

「お前が来るとこじゃない」

「どういうことですか?」

「いいから帰れ」

「嫌です」


 気づけば首を横に振っていた。


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