強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 男の子が目を丸くする。そうすると年相応の男の子に見えた。


「……なんでだよ」

「怪我人を置いて帰るつもりはありません」

「俺は大丈夫」

「大丈夫な人はこんな大怪我して倒れていません」

「……」


 男の子が黙った。意地を張っても無駄だと理解してくれたらしい。

 わたくしは少しだけ指の震えが治った……気がする。

 逃げ出したいのをちゃんと我慢して、理路整然と言えたから。

 ……泣きそうになったけれど。


「立てます?」

「立てる」


 男の子は床に手を置いて立とうとして──崩れた。


「肩を貸します」

「いらない。お前が濡れる」

「わたくしは大丈夫です」

「寒いだろ」

「あなたよりは平気です」

「でも、寒い」

「…………」


 この子、頑固者だ。

 ううん、他人を優先するのに慣れてしまっていると言うか。

 わたくしは言葉に詰まり、どう説得するか悩む。



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