強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 ……なんて人なの。

 主人に交渉を持ちかけるなんて。

 でもそのくらいはいいかと了承する。

 問題はここからだ。


「今日のことは……わたくしが……腰を抜かしたことは忘れてください」

「ああ」


 藤太の肩から力が抜ける。


「別にいいよ」

「今、笑いましたわね!」

「いやいやいや」

「絶対に笑いました!」

「じゃあ忘れる」

「……約束でしてよ?」

「そうだな、約束」


 わたくしは安心して短く息を吐いた。

 けれど、藤太は少しだけ真面目な顔をした。


「瞳も約束守ってくれよ。無理して一人で何でもしようとしないでくれ」

「……それは」

「強いのは十分わかったから」


 胸が苦しくなった。

 誰にもかけられたことのない言葉。

 強く、しっかりしていなければ。

 お父様の、お母様の代わりにならなければ。

 ──そう思っていた。

 でも、藤太はわたくしが強いことを知っている。


< 65 / 182 >

この作品をシェア

pagetop