強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
思い出しただけで、バクバクと脈が速くなる。
わたくしは慌てて布団を頭までかぶり、目の前の暗闇に心を落ち着かせようとした。
「一体、何ですの……」
あんな言葉をあんな顔で。
真っ直ぐにわたくしを見つめて、何の迷いもなく言うなんて。
藤太は、本当にずるい。
……本人は、きっと何も考えていないのだから、悩むだけ無駄だとわかっているけれど。
きっと明日の、休日の朝には、いつも通りで。
『おはようございます、お嬢様』
そう言って、何食わぬ顔で紅茶を出してくる。
わたくしだけが意識しているなんて、絶対に恥ずかしすぎる。
「……もう、寝ないと」
無理やり目を閉じても眠れない。
昼間の恐怖だけではなかった。
お父様のこと。
家のこと。
施設のこと。
そして、自分のこと。
考えなければならないことが多すぎて、頭の中が少しも静かにならなかった。