強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 わたくしは諦めてベッドから抜け出した。

 部屋を出て、誰もいない廊下をゆっくり歩く。

 そのまま向かったのは、庭だった。

 九月の夜は、昼間よりずっと涼しい。

 庭に出た瞬間、ひんやりとした風が頬を撫でた。


「……気持ちいい」


 月が出ている。

 雲の切れ間から覗く月明かりが、広い庭を淡く照らしていた。

 ……静かだ。

 わたくしは庭のベンチに腰を下ろした。

 ここなら、誰にも見られない。

 誰にも、弱い姿を見せなくていい。

 わたくしは膝の上で手を握った。


「……お父様」


 ぽつりと呼んでみた。

 返事があるはずもないのに。

 それでも、口にせずにはいられなかった。

 お父様が倒れてから、周囲の人たちの視線が変わった。

 まるで、「次はあなたがこの家を背負うのだ」と言われているような。


「わたくしが……しっかりしなければいけないのに……」


 声が震えた。



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