強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 慌てて唇を噛む。

 泣いてはダメ。

 わたくしは久保寺家の娘なのだから、弱音なんて吐いてはいけない。

 いつだって、完璧でいなければ。


「……なのに」


 一粒、涙が頬を伝った。


「どうして……」


 どうして今日は、こんなにも心細いのだろう。

 昼間は平気だった。

 不良たちに囲まれても、怖くても動けた。

 皆の前では、ちゃんと立っていられた。

 そのくせ一人になったとたんに、膝が震える。


「……わたくし、格好良く悪すぎですわね」

「何が?」

「きゃあ!」


 突然、背後から声がして私は飛び上がった。

 振り返るとそこにいたのは──。


「藤太……」

「やっぱり瞳だったか」

「あ、あなたあのまま帰ったんじゃ……」

「事情聴取が長引いて、さっきまで田中さんに報告してたんだよ」


 藤太はそう言って、少し首を傾げた。


「こんな時間に一人で何してるんだ?」



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