強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「でも、あなたが……」

「俺は寒くないよ」

「……平気なふりをしているだけではありませんの?」


 思わず踏み込んでしまう。

 藤太は少しだけ息を詰めて、それから苦笑した。


「……まあ、それはお互い様だな」

「……」

「瞳も、俺も」


 胸の奥が、きゅっとなる。


「俺ね、ずっと怖いんだ」

「藤太が?」

「ああ」


 意外だった。

 あれだけ落ち着いているのに。


「瞳が、みそら園のチビたちが傷ついたら……みそら園がなくなったら……」

「……」

「そんなことばっかり考えてる」


 わたくしは顔を上げた。

 月明かりの中で、藤太がまっすぐこちらを見ていた。


「ずっと怖くてたまらない」


 その言葉が、胸に染み込んでいく。

 わたくしはずっと、自分だけが怖いと思っていた。

 でも、藤太も恐怖を抱えていた。

 わたくしや皆のことが心配で、どうしようもなくて。



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