強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……泣いていいんだよ」

「簡単に言わないでください」

「じゃあ、泣いてる間は俺がここにいる」

「え?」

「一人にしないから」


 まただ。

 また、胸が苦しくなる。

 わたくしは慌てて顔を背けた。


「……あなたは、本当に……ずるい人ですわ」

「俺が?」

「ええ」


 藤太は意味がわからないという顔をしている。

 たぶん、本当にわかっていない。

 だから余計に困る。

 わたくしは上着の端をぎゅっと握った。


「……少しだけ」

「ん?」

「少しだけ、このままでいても……よろしいですか?」


 聞くのが恥ずかしくて、顔を上げられない。

 隣から、小さな声が返ってきた。


「ああ」


 それだけ。

 それだけなのに、安心した。

 わたくしは静かに月を見上げる。

 隣には藤太がいて、それだけで、今まで抱えていたものが少しだけ軽くなった気がした。



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