強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 ──完璧でいなくてもいい。


 少なくとも、この人の前では。

 そう思ってしまった。

 一人で背負い込むのはお互いにやめる。

 その約束は、わたくしの崩れそうな足を支え続けてくれると──何の証拠もなしに、信じてしまう。

 この夢のような時間は、いつまでも続くはずがなくて。

 施設に帰らなければならない藤太に上着を返し、わたくしは誰にも見られずに自室に戻った。

 次の日。

 予想通り、藤太はいつも通り執事然とした振る舞いで挨拶してきた。

 昨日の夜のことなんて、なかったみたいに。

 その夜のことを、わたくしも藤太も誰にも話さなかった。

 昼間、怖くて震えていたことも。

 お父様のことで泣いたことも。

 藤太の上着を借りたことも。

 ……約束したことも。

 そして──彼の隣にいると、こんなにも安心できることも。

 全部、わたくしと藤太だけの秘密。

 月だけが、それを知っていた。


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