強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「また勝手に出てたでしょ!」
「ちゃんと言ってきたって」
「嘘。先生から聞いた」
「……」
「しかも昨日、怪我したって?」
「大したことない」
「大したことあるから言ってるの!」
女の子が藤太の腕を掴む。
そして傷を確認するように覗き込んだ。
「ほら、まだ腫れてる」
「もう治ってる」
「治ってない」
「治ってるって」
「また嘘」
「……」
藤太が押し黙った。
わたくしは思わず二人を見つめてしまう。
何だろう、この距離感。
あまりにも自然で、気のおけない仲だと一目でわかる。
──藤太が誰かにこんなふうに言われているのを、初めて見た。
「……こちらの方は?」
女の子がわたくしに気づいた。
藤太も思い出したように振り返る。
「ああ。瞳」
「……」
名前を呼ばれて、少しだけ胸が鳴った。
「久保寺瞳さん」