強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 小さな女の子が近寄ってきて、わたくしの服を引っ張った。


「どうかしまして?」

「藤太お兄ちゃんのお姉ちゃん?」

「違う」


 藤太が即座に否定した。


「じゃあ、恋人?」

「違う!」

「……」


 わたくしと藤太の声が重なり、女の子がきょとんとする。

 その横で、美緒が吹き出した。


「ふ……っく……ははっ!」

「美緒!」

「だって、二人とも必死なんだもん」

「笑うなよ!」

「ごめんごめん」


 わたくしは頬が熱くなるのを感じた。

 恋人──その言葉を聞いただけなのに。

 どうしてこんなにドキドキするのだろう。


「……久保寺さん」


 美緒がわたくしに近づいてきた。


「何でしょう?」

「ちょっといい?」

「はい」


 美緒は藤太に聞こえないくらいの声で言った。


「藤太のこと、好き?」

「……っ」


 息が止まり、思考も止まった。


「な……」


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