強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
考えながら口にする。
「わたくしにとって、大切な人で……それだけです」
「そっか」
美緒は否定しなかった。
からかいもしなかった。
ただ、少しだけ優しい顔をした。
「なら、今はそれでいいんじゃない?」
「……え?」
「無理に名前つけなくても」
その言葉に、わたくしは黙った。
美緒は藤太が子どもたちに囲まれているのを見る。
笑っている、いつもの藤太。
みそら園にいるときの藤太は、久保寺家にいるときとは少し違って見える。
ここが彼の本当の居場所なのだと、改めて感じた。
「……美緒さん」
「美緒でいいよ」
「では、美緒」
「うん」
「あなたは……藤太のことが好きなのですか?」
聞いてから、胸が少しだけ痛んだ。
でも、美緒は驚くほどあっさり答えた。
「昔は、ちょっと好きだったかも」
「……」
「でも今は違うかな」