強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「近所や商店街の人たちと……そうですか……」
わたくしはあごに指の背を当ててしばらく考えると、二人に微笑んだ。
「……今日のところは帰らせていただきます」
「そ、そう?」
「ええ。良い考えが浮かびそうですの」
そうと決まれば善は急げだ。
わたくしが車に戻ろうとすると、藤太が声をかけてきた。
「送る」
「大丈夫です」
「でも──」
「瞳」
美緒が口をはさんだ。
「車まででも送らせてあげて」
「……わかりました」
「よかったらまた来てね」
「いいのですか?」
「今度は普通に遊びにきて」
その笑顔に、嘘はなかった。
「藤太も喜ぶし」
「ちょっ、美緒!」
藤太が突然慌て始めた。
わたくしは思わず彼を見る。
「……喜ぶんですか?」
「いや、それは……」
「どうなんです?」
「……喜ぶ」
聞き取れるか聞き取れないかの、小さな声。