強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
その一言だけで、胸が熱くなった。
「では、また来ます」
「うん」
美緒や子どもたちに手を振られ、振り返しながらゆったりとみそら園の門をくぐる。
隣には藤太。
「……美緒と他に何話してたの?」
「秘密です」
「えー」
「女性同士の話です」
「俺には聞かせられない?」
「ええ」
「気になる」
「気にしなくて結構です」
藤太が不満そうに唇を尖らせる。
そんな彼を見て、わたくしは少し笑った。
でも頭の中には、美緒の言葉が残っていた。
──藤太が誰を見てるか、わかるから。
わたくしは、まだわからない。
自分の気持ちも、藤太の気持ちも。
ただ、帰り道で隣を歩く藤太の横顔を、いつもより少しだけ意識してしまった。
それだけは、認めざるを得なかった。
けれど今は、固まりそうなアイデアばかりに気を取られ、それ以上深く考えることはなかった。