君の名に花束を
すっかり夏の熱を失い、涼しくなった風が四葉の髪を撫でる。四葉は考えるのを一旦止め、顔を上げた。刹那、時が止まったような感覚が走る。
裏庭にはベンチが置かれている。そこで四葉は一人になりたい時に座って休憩するのだが、今日は先約がいた。一人の男子生徒が本を読んでいた。整えられた黒い髪が風に揺れている。その横顔はまるで芸術作品かのように美しく見えた。
(この綺麗な人、東郷圭吾(とうごうけいご)くんだっけ……)
圭吾とは二年生から同じクラスになったのだが、話したことはほとんどない。彼はいつも教室にいる間は分厚く小難しそうな本を読んでおり、友達と休み時間のたびに話す四葉とは真逆の世界を生きている人だ。
(こんなに綺麗な人だったっけ?)
四葉は何も言葉を発することができず、ただ彼を見つめることしかできなかった。すると、視線に気付いたのか圭吾が本から顔を上げる。
「あっ……」
視線が絡み合い、四葉は気まずさを覚えていく。まともに話したことがないクラスメート同士だ。沈黙がどこか重い。
裏庭にはベンチが置かれている。そこで四葉は一人になりたい時に座って休憩するのだが、今日は先約がいた。一人の男子生徒が本を読んでいた。整えられた黒い髪が風に揺れている。その横顔はまるで芸術作品かのように美しく見えた。
(この綺麗な人、東郷圭吾(とうごうけいご)くんだっけ……)
圭吾とは二年生から同じクラスになったのだが、話したことはほとんどない。彼はいつも教室にいる間は分厚く小難しそうな本を読んでおり、友達と休み時間のたびに話す四葉とは真逆の世界を生きている人だ。
(こんなに綺麗な人だったっけ?)
四葉は何も言葉を発することができず、ただ彼を見つめることしかできなかった。すると、視線に気付いたのか圭吾が本から顔を上げる。
「あっ……」
視線が絡み合い、四葉は気まずさを覚えていく。まともに話したことがないクラスメート同士だ。沈黙がどこか重い。