~best friend~ふたりで図る距離(こい)の行方。


「そっか,じゃあ帰ろうぜ」



彼方はいつもよりよそよそしい私へ驚いたように見えたけど,何も感じてないふりをしてくれた。

断るにしても,以前の私はこうじゃなかった。

2人で歩きだしても,お互い何も言わない。

探るような空気が,どちらからも流れる。

どうしよう。

何も頭に浮かばなくて,本気で困ってしまう。

前はどうやってこの,駅までの長い道のりを埋めていたんだっけ。

なんの,どんな話を。

すらすら出てきたはずの話題が,たったの夏期休暇を挟んだだけの今はお互い1つもない。

今まで出来ていたことが出来ないなんて……

こんなに不器用な私じゃ,もうだめなのかもしれない。

じわりと頭に浮かんだ自分の映像は,目に涙を浮かべていた。

痛い,苦しい。

初恋が,言葉にならずに泣いている。

いつか聞いてしまった彼女の声が



『透流……っ!! ふふ』



無性に,羨ましかった。

その夜私に届いたメッセージは



『明日アイスの新作出るって。行く?』

『えーーーー。いく,かも』

『り』



私よりずっと器用な彼方の気遣いに溢れていた。

< 9 / 24 >

この作品をシェア

pagetop