この結婚には愛しかない



できあがったビジョン10(イチマル)の初回の検討会議。

勢ぞろいした各事業部長たちが社長と専務、常務2人の前で発表し、我が社の全体像を全員が把握し独立に向け足並みをそろえる。

2回目以降は事業部長と経営層が個別に数字を詰めていき、最後にもう一度集合し、新体制がスタートを切る。


ホールディングスからの独立は来年4月1日に正式に決まった。ビジョン10のプレスタートは、それより半年早い9月だ。


「私は“攻めと守り”と言いましたよね?この計画のどこが攻めなのかご説明いただきたい」


トップバッターは我が社の柱である半導体事業部。

その発表の後の神田専務の発言で、第1会議室がしんと静まり返った。


神田専務の口調はいつも通り。もちろん怒鳴ってなどいない。声の大きさも、広い会議室なので張ってはいるけど、それもいつもと変わりはなかった。

ただ、声に厳しさがあった。


「営業部隊は今すでにターゲットを絞って毎日飛び回ってますか?違いますよね、居室にいますよね。スピード感が全然足りない」

たじろぐ半導体事業部長に、神田専務は追い打ちをかける。


「そもそも、今までホールディングスに作れと言われたものを作っていたんですから、本当の営業をしていた訳じゃない。圧倒的にノウハウもナレッジも不足しています」
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