この結婚には愛しかない
ノック音が聞こえ、ミシェルさんが次の言葉を飲み込んだ。

伊織さんのお顔が見えてほっとした。


私に笑顔をくださったあと、ミシェルさんとハグをされた。時間にして1秒ほど。

私と再開した時と全く異なるそれに、佐和の言う“ハグには種類がある”を目の当たりにした気がした。


「ハイミシェル、早かったね。俺の最愛の妻をいじめてないだろうね」

伊織さんは英語でミシェルさんに言われ、私の頭を抱いてこめかみの辺りに口づけた。


「伊織さんっ」

「莉央大丈夫?いじめられてない?」

「はい。問題ないです」

「伊織、あなたのパートナーはかなり気が強いのね。私に言い返してきたわ」

「ははっ莉央が?でも違うよ。気は強くない。芯があって、心が強いんだ。俺を愛してるしね。どう?俺の莉央はいい女だろう?」

「ふん!まあまあね」

「ミシェルが“まあまあ”って、かなり褒めてるね」

「褒めてないわよ。それに伊織、私怒ってるのよ。あなたが結婚したってジェイデンから聞かされたんだから」

「ジェイデンにはすぐ連絡したよ。彼は友人だからね。でも君とはプライベートな連絡を取るほどの仲じゃないだろ?」

「なによ。俺と一緒に働かないかって誘ってきたくせに」

「それはビジネスだよ」

「そんなこと分かってるわよ。イヤな男ね」


早口の英語のラリー。翻訳アプリの日本語を目で追い、なんとか2人の会話に着いていく。
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