この結婚には愛しかない



午前8時50分。

朝からずっと不在の大森室長から、社用スマホに着信だ。


「はい、小泉です」

「大森です。ごめん小泉さん。すぐ1会議に来て欲しい。会議の議事をお願いしたい。長谷川くんも一緒に」

「はい、承知しました。すぐ伺います」


電話の向こうはザワザワと騒がしい。でも大森室長の声から緊急度がわかる。隣の長谷川くんに電話の声が漏れていたようで、長谷川くんはすでに立ち上がり、ノートパソコンに繋がるコード類を抜きはじめていた。


「小泉さんは議事録要員でしょ?俺は?資料問題なかったですよね」

「うん。会議9時からだよね?資料は何回も確認したし、長谷川くんも議事録かな...」

「俺無理ですよ。小泉さんみたいに神がかった議事作れないです」

電源コードだけ繋いだままのノートパソコンとコードレスマウスを手に部屋を出る。

ドア付近で佐和と目が合い、佐和の口ががんばれと動きエールを送ってくれた。


エレベーターで1階に降りながら、思いを馳せる。


議事録作成。これは自信を持てるまで成長したスキルだ。

タイピングにミスがなくて速いね。要約の言葉選びと発言の乖離がない。業務内容が分かるようになればもっといい議事が作れるようになるからがんばって。

神田さんにそう言っていただけて嬉しくて、得意とすることが出来た。
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