この結婚には愛しかない


作戦決行日の19時すぎ。

会社の最寄り駅近くのカフェに向けて、急げ急げと早歩きだ。4月中旬の気温は高く、じんわり汗ばんでくる。


「ごめーん莉央お待たせ。大丈夫?ナンパされなかった?」

「お疲れ様。急な残業大変だったね」

「時差考えて欲しい。しかも訛りが酷くて聞き取りづらかった」

ナンパには触れない莉央。これはされたな。ほんとごめん。


計画では、今頃莉央とご飯を食べてるはずだった。

定時ギリギリのタイミングで、ベトナムの子会社との緊急Web会議に、通訳が全員出払っていたため急遽招集されたのだ。

ベトナムとの時差は日本が2時間進んでいるため、現地は17時の定時でも、こっちは19時。

早くも作戦が頓挫しそう。


タイミングは最悪だったけど、今の私はWebデザインの仕事が本職で、英語から離れていたからちょうどよかった。話さないと忘れちゃうし、勘が鈍ってしまう。


「ほんとごめん。もう今日スーツ屋行くのやめる?」

「佐和が疲れてなかったら行こうよ。今から行けばちょうど計画通りの時間に行けるよ。あの辺でご飯食べて帰ろ」

「うんそうしよ。今日行く気になってたし。ごめんメイクだけ直させて。ワキ汗やばいかな、」

こうして私たちは、スーツ店へ向かったのだ。
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