この結婚には愛しかない
濃紺のスーツのジャケットを脱ぎ椅子の背もたれにかけ、神田さんが立ち上がった。
白いシャツの上にジレ。ああ、神田さんだ。
経営企画室長が、神田さんの経歴を紹介する。
神田さんは国内最難関の大学の法学部を卒業後、ホールディングスに入社。経営企画部に勤務し、その後経営戦略部副部長時代に1年間こちらに出向。帰任後は執行役員兼海外事業戦略部長として、1年の大半を海外で過ごされた。
凄い。あのホールディングスで、当時30歳の若さで執行役員。
「この度専務取締役に就任いたしました、神田伊織です。よろしくお願いします」
少し低めの、魅力的な落ち着いた声に聞き惚れてしまう。神田さんが頭を下げたと同時に拍手が起こる。私も全力で拍手をした。
「ホールディングスの経営悪化。しかし変わらない殿様商売。もう自力での再編は不可能だと2年ほど前から感じていました。ここはオフレコで」
私は手を止め、直近の入力を削除した。長谷川くんの視線を感じ彼を見たのだけれど、そっと目を逸らされた。
「自分の去就を考え始めた時、1番に頭に浮かんだのは他でもない、この会社でした。それから牡蠣がとても美味しかったことも忘れられませんでした」
役員たちの笑いが起きる。ああもう、やっぱり神田さんだ。
白いシャツの上にジレ。ああ、神田さんだ。
経営企画室長が、神田さんの経歴を紹介する。
神田さんは国内最難関の大学の法学部を卒業後、ホールディングスに入社。経営企画部に勤務し、その後経営戦略部副部長時代に1年間こちらに出向。帰任後は執行役員兼海外事業戦略部長として、1年の大半を海外で過ごされた。
凄い。あのホールディングスで、当時30歳の若さで執行役員。
「この度専務取締役に就任いたしました、神田伊織です。よろしくお願いします」
少し低めの、魅力的な落ち着いた声に聞き惚れてしまう。神田さんが頭を下げたと同時に拍手が起こる。私も全力で拍手をした。
「ホールディングスの経営悪化。しかし変わらない殿様商売。もう自力での再編は不可能だと2年ほど前から感じていました。ここはオフレコで」
私は手を止め、直近の入力を削除した。長谷川くんの視線を感じ彼を見たのだけれど、そっと目を逸らされた。
「自分の去就を考え始めた時、1番に頭に浮かんだのは他でもない、この会社でした。それから牡蠣がとても美味しかったことも忘れられませんでした」
役員たちの笑いが起きる。ああもう、やっぱり神田さんだ。