この結婚には愛しかない
社長の言う通り、海外企業からの買収の話がいくつもある。

そして、極秘で3社と並行して協議が進められているのが現状だ。

もしどこかと合意し買収が決定したら、半年も経たないうちに買収が完了するだろう。


食事も終盤に差し掛かり、社長にビールのおかわりを勧めると、「これ以上は神田執行役とビジネスの大事な話が出来なくなる」と固辞された。

そしてビールの代わりに水を飲み干し、両手の肘をつき、口の前で手を結んだ。

「折り入ってご相談が」

社長は祈るようなポーズで真剣な表情だ。

もしかしたら、社長も俺と話をしたい思惑があったのか?ほぼ確信めいた想像が頭に浮かぶ。


「神田執行役は、半導体市場についてどの程度ご存知ですか?」

「出向中に学びましたが、最近また学び直しました。半導体そのものについても。かなり複雑な製造工程も頭に入ってます」

「凄いですなあ。いやあ感心します。複雑なんてものじゃないですから、わたしはなかなか覚えられなくて」

確かに時間かかりました。と俺もフォークを置き、紙ナプキンで口元を拭いた。
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