この結婚には愛しかない
「ホールディングスにもしものことがあったら、と我が社の将来を危惧しています」

「そうですね。当然だと思います」

「ただ、目まぐるしく変化する半導体市場には、私のような年寄りでは正直対応しきれないんです。勉強されているならご存知でしょうが、海外企業の技術の進化が凄まじく...」

「ええ、日本はそれに追いつこうと必死です。そして国をあげて勝負をかけた。現状は憂いしかないですが」

いい話の流れになったと思った。“実行”段階にいくつかマイルストーンを置いたが、その中でも今日のこの対話はかなり重要だからだ。


「今からの私の発言を、決して他言しないとお約束いただけますか?」

つい、声に力が入ってしまう。

「もちろんです」

社長もかしこまった表情で、口を固く結んだ。


「私は今年度中にホールディングスを退社します。その後は、御社の経営に入りたいと考えています」

俺の発言に、社長が僅かに目を大きく開いた後、口元をほころばせた。


「私からもお願いしたいと思っていたところです。ぜひ神田執行役の力を貸していただきたい」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


頭を下げながら、正直ほっとした。ああこれでやっと...

瞳を閉じなければ逢えないキミに、大きく近づいた。
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