この結婚には愛しかない
「意外とって失礼じゃない?」

「かわいこぶって、やー打てなーいとか言うやつ多い中、莉央ちゃんは構えもガチで」

「だって野球初めてで楽しくて」

「そして大谷打てる発言」

仲良さそうな2人を見て、あの夜を思い出して笑った。あの、莉央からのメッセージを見て大いに心を乱した夜だ。


「中村そろそろ仕事。お前あっち接客しろ」

湊くんが指示を出す。そうだった。本来の目的を忘れていた。


「中村くん、妻と仲良くしてくれてありがとう」

「俺の方こそ。莉央ちゃんには相談に乗ってもらうばかりでお世話になってます」

「中村くん彼女とは順調?」

「おお。いおりおに負けないくらい仲良しよ。今度みんなで飲もうよ」


中村くんと別れオーダーコーナーに移動しながら、莉央が教えてくれた。

中村くんは半年ほど前に偶然幼なじみと再会し、少し前から付き合っていると。


何事も勢いとタイミングが重要だ。

俺はその両方を放棄し、あの日莉央と2度と会うことはないと覚悟して去った。

3年間仕事ばかりして、莉央に対して想いを募らせるだけで何もアクションを起こさなかった。


この中村くんといい、長谷川くんといい、若くてかっこいい男性たちが周りにいたのに、莉央が俺を想い続けてくれていたのは奇跡としか思えない。


自分の愛を信じたから、奇跡が起きたのかな。

いつも仕事で厳しい現実と対峙してばかりいるから、たまにはこんな夢見がちな思考でもいいよね。
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