この結婚には愛しかない
「ごめんね、チョコ買おうとしてたら専務にお声掛けいただいて、専務室でお話してた」

「よかったですね。神田伊織さんが専務になって戻ってきて。なんすかあの人。朝イチの挨拶しびれたし、午後からも俺がとっさに答えれないくらいの細かい質問。数字読む力エグいし法学部卒とか嘘でしょ。あの人の頭割って中身見てみたい」

「長谷川くん」

「圧倒的なカリスマ性を見せつけられてただでさえへこんでたのに、小泉さんのそんな顔見せられて。分かってます?今の小泉さんすげえ女の顔してる」


とっさに両手で顔を隠し、長谷川くんに背を向けた。


「すみません俺、今すげえ嫉妬して八つ当たり。余裕なさすぎてかっこ悪、マジごめん、なさい...」

「...ごめん」

「こっち向いてくださいよ」

「ごめんね」

おーい小泉さん。と立ち上がった長谷川くんが椅子の背もたれをゆっくり反転させる。再び対面した長谷川くんは、いつもの笑顔が戻っていた。


「(傷付けた...)」

「小泉さんの無事が確認できたんで帰ります」

「私も帰る」

「あー...帰りますか。早く1人になりたいんだけど、」

「やっぱりもうちょっと仕事して帰る」

「冗談ですよ、帰りましょ。小泉さんとちょっとでも一緒にいたい」


長谷川くんごめんなさい。

神田さんとハグしていて、長谷川くんの時一瞬感じた恐怖はなくて。

体が強ばることもなくて、喜びと胸の高鳴りしかなかったの。
< 34 / 348 >

この作品をシェア

pagetop