この結婚には愛しかない


「小泉さん遅いですよ」

長谷川くんに言われ、無意識に自分の席に戻ったことに気が付いた。

いくら夢みたいな時間を過ごせたからって...それほどぼおっとしていたことに、自分でもびっくりした。

居室には長谷川くんしかいなかった。


「あまりに戻ってこないから心配してたんですけど、なんですかその顔」

「顔?あ!ごめんチョコ買いに行ったのに」

「いいです、もう」


吐き捨てるような語尾にチクリと痛みを感じ、彼の表情から、それが気のせいじゃないと悟る。

長谷川くんの視線が私の手元にチラリと動く。こっそり食べてと言われたお菓子を手に持っていることに気付いたけれど、今さら隠すわけにもいかない。

長谷川くんは目ざといし、勘が鋭い。


「心配して休憩所に探しに行ったけどいないし。どこ行ってたんですか?まあ予想ついてますけど」

やっぱり。分かっていて聞いてる。
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