あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 五か月ほど前に、テルキにある簡易宿が爆発した。すぐさま騎士団を派遣し、現地調査を行った。
 宿に泊まっていた商人風の男が持っていた魔石が違法物であり、それが爆発したというのが騎士団の調査結果である。商人風の男は怪我をしたが、なんとか命は助かって、今では地下牢にいる。
 その宿にいた従業員や客人も爆発事故に巻き込まれ、幾人もの人間が怪我をした。幸いなことに死者は出ておらず、その怪我もかすり傷や火傷といった数日で治るような軽いものばかりだった。
 さらに従業員から話を聞けば、客人の何人かが先に帰ったとのこと。正確には、宿泊していた三人。客が無事であるのもわかったし犯人も捕まえたため、それ以上の深追いはしなかったようだ。
「もしかして、あの爆発事故で姿が消えた三人……?」
 腕を組んだクロヴィスは呟いた。
「ええ、そうですね。調書を確認したところ、その三人のうちの身体的特徴がウリヤナ様によく似ておりました」
 アルフィーは淡々と答える。
「ちっ」
 ウリヤナはどこに消えたのか。
 舌打ちをしたクロヴィスはギリリと唇を噛みしめ、爪が食い込むほど強く拳を握った。
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