溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
穏やかにそう言うと目尻を下げて私を見つめる。


あれ。


気のせいかな、いま彼の表情が一瞬切なげに見えた。


「あの、紫音」


心配になってどうしたの?って聞こうとしたら、いつのまにか3階にある私の教室、1年桜組に到着していた。


「お嬢様、ドアを開けてください」


目が合うと、いつものクールな表情だったので、私の思い過ごしかなって思った。


「あ、うん」


彼の両手が塞がっているから、私が横開きのドアを開けようとして、ハッとする。


このまま入って行ったら大変。


きっと騒がれて目立ってしまう。


執事に甘えまくっているようにも見られかねない。


「紫音、おろして」


「はあ、ですが」


「いいから」


彼はしぶしぶ私を下ろすとドアをゆっくりと開いた。


「どうぞお嬢様」


うやうやしく頭を垂れる。


「うん」
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