溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
それでも、いつかはたぶんこれを渡すときがくるだろうから。


今、渡しておいてもいいような気がして彼に差し出した。


「あのね、これは紫音に……受け取ってもらえるかな」


彼は怒るかもしれないって予感はあった。


でもどうしても伝えておきたかった。


これ以上ないくらいの感謝の気持ちを。


「……」


彼はそっと目を閉じてため息を漏らす。


「俺には一生必要ありません。
それはずっとお嬢様のものです」


そう言ってさっき入ってきたドアに向かって歩き出した。


「お腹がすきましたよね。何か食べるものをさがしてきます」


「あ」


やっぱり、ちょっと怒らせてしまったかな。


本当は彼ならそう言ってくれるだろうってわかってた。


紫音は何も欲しいなんて思っていない。


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