御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
女性側の幹事と原木で料理を適当に注文してくれたところで自己紹介となった。
あぁ、こういうのが嫌なんだよな。
ぼさっとした前髪をさらに気持ち前に持ってきて表情が出ないようにした。
端から順に名前を言っているが全く頭に入らない。覚える気もないからインプットされていかない。
ほら、と松本さんに小突かれて自分の番だと気がついた。
「三橋製薬の研究員、奥山蒼生です」
ボソッと言うと視線をテーブルに落とした。
梅木がフォローするように
「こいつすごい研究してるんだ。実績も出してるし。ちょっとだけ人見知りだけどいいやつなんだ」
と言ってくれるが、女性陣は全く興味がなさそう。まぁ、そんなもんだろう。こんな見た目で人見知りに関わっている暇はないだろう。
テーブルに来た料理を食べて時間を潰そうかと思っていると、向かいに座る女の子が取り皿に分けてくれていた。俺にも? と思ったが深い意味はなく、みんなにわけていたようだった。
小さな声で「ありがとう」と伝えるとニコリと笑ってくれた。
だんだんと盛り上がる中、俺は黙々とビールを飲み、出てきた料理を順に片付けていた。
俺の向かいの女の子も同じように残りのメンバーの会話に入るわけでもなく黙々とご飯を食べていた。俺の向かいに座りツイてなかったと諦めたのかもしれない。申し訳なく思うが、何を話したらいいのかわからない。お互い話すこともなく食べ勧めていると彼女からメニューを渡された。
「デザート食べません?」
「え? あぁ」
突然声をかけられて驚いたが、単にデザートのお誘いだったので気負うことなくクレームブリュレに決めた。彼女にも何にするか聞くとデザート盛り合わせだと言うので俺は2人分の注文を店員にした。
会話という会話なんてなく、俺は黙々もお腹いっぱいになるまで料理を堪能した。
「このあとカラオケどう?」
「いいね」
みんなが盛り上がっている中、俺はもちろんお役御免だろう。
「朝早いから帰るよ」
それだけボソッと言うと、さっき向かいに座っていた彼女も
「私もこれで失礼します」
と言っていた。きっと彼女も俺のように強引に連れてこられた口だろう。
するとすかさず松本さんが口を挟んできた。
「それならもう夜も遅いし、お前が送っていってやれ」
「え?」
ほらほら、と俺の背中を押し、彼女の方に足を向けさせた。
どうみてもこんなやつに送り届けられる方が不安だろう、と俺は思うのだがみんな酔っているのか話を聞いてくれない。ここまで来て彼女に、送りたくない、だなんてもちろん言えるわけがない。彼女さえ良ければ駅まで送るか、と思い声をかけた。
「えっと……もし嫌じゃなければ駅まで送るけど」
「え? 大丈夫ですよ。こんな私が襲われる心配なんてあるわけないじゃないですか」
あっけらかんと話す彼女に俺は顔をあげた。
まじまじと彼女の顔を見るとクリッとした瞳が印象的だ。可愛らしい雰囲気なのになぜそんなことを言うのだろう。
「こんなぽっちゃりを襲わなくても世の中可愛い子はたくさんいますからね〜」
「え……いや。あの……」
あまり人付き合いをしてこなかったからか、こう言うときに何て返したらいいのかわからない。
「俺はぽっちゃりしてるくらいの方が健康的で可愛くていいと思うけど」
思ったまま伝えると周りにいた友達が口々に俺を非難してきた。
「ひどっ。なにも本人にぽっちゃりだなんて言わなくても良くない? デリカシーにかけてるわ」
あ、そんなものなのか……。
俺は悪い意味でなく、本当に可愛らしいと思ったから言っただけなのに。ガリガリに痩せてるよりよっぽどかいいと思うんだけど。
「ヤダ、本当のことだからいいの。ありがとね」
慰めてくれてた友人に笑って返す彼女はなんとも思っていなさそう。でもそう見えるのは俺だけなのだろうか。傷つけてしまったのだろうか。
「ごめん」
俺が頭を下げると彼女は首を横に振った。
「ううん。別に気にしてないよ。気にしてるなら食べてないし」
「そっか」
女性陣はやや非難めいた表情で俺をみていたが、彼女自身は本当に気にしていなさそうでちょっと救われた。
きっと彼女たちは人の見た目をどうこういう前に自分の見た目を直せよ、と思われているんだろうなと思った。
あぁ、こういうのが嫌なんだよな。
ぼさっとした前髪をさらに気持ち前に持ってきて表情が出ないようにした。
端から順に名前を言っているが全く頭に入らない。覚える気もないからインプットされていかない。
ほら、と松本さんに小突かれて自分の番だと気がついた。
「三橋製薬の研究員、奥山蒼生です」
ボソッと言うと視線をテーブルに落とした。
梅木がフォローするように
「こいつすごい研究してるんだ。実績も出してるし。ちょっとだけ人見知りだけどいいやつなんだ」
と言ってくれるが、女性陣は全く興味がなさそう。まぁ、そんなもんだろう。こんな見た目で人見知りに関わっている暇はないだろう。
テーブルに来た料理を食べて時間を潰そうかと思っていると、向かいに座る女の子が取り皿に分けてくれていた。俺にも? と思ったが深い意味はなく、みんなにわけていたようだった。
小さな声で「ありがとう」と伝えるとニコリと笑ってくれた。
だんだんと盛り上がる中、俺は黙々とビールを飲み、出てきた料理を順に片付けていた。
俺の向かいの女の子も同じように残りのメンバーの会話に入るわけでもなく黙々とご飯を食べていた。俺の向かいに座りツイてなかったと諦めたのかもしれない。申し訳なく思うが、何を話したらいいのかわからない。お互い話すこともなく食べ勧めていると彼女からメニューを渡された。
「デザート食べません?」
「え? あぁ」
突然声をかけられて驚いたが、単にデザートのお誘いだったので気負うことなくクレームブリュレに決めた。彼女にも何にするか聞くとデザート盛り合わせだと言うので俺は2人分の注文を店員にした。
会話という会話なんてなく、俺は黙々もお腹いっぱいになるまで料理を堪能した。
「このあとカラオケどう?」
「いいね」
みんなが盛り上がっている中、俺はもちろんお役御免だろう。
「朝早いから帰るよ」
それだけボソッと言うと、さっき向かいに座っていた彼女も
「私もこれで失礼します」
と言っていた。きっと彼女も俺のように強引に連れてこられた口だろう。
するとすかさず松本さんが口を挟んできた。
「それならもう夜も遅いし、お前が送っていってやれ」
「え?」
ほらほら、と俺の背中を押し、彼女の方に足を向けさせた。
どうみてもこんなやつに送り届けられる方が不安だろう、と俺は思うのだがみんな酔っているのか話を聞いてくれない。ここまで来て彼女に、送りたくない、だなんてもちろん言えるわけがない。彼女さえ良ければ駅まで送るか、と思い声をかけた。
「えっと……もし嫌じゃなければ駅まで送るけど」
「え? 大丈夫ですよ。こんな私が襲われる心配なんてあるわけないじゃないですか」
あっけらかんと話す彼女に俺は顔をあげた。
まじまじと彼女の顔を見るとクリッとした瞳が印象的だ。可愛らしい雰囲気なのになぜそんなことを言うのだろう。
「こんなぽっちゃりを襲わなくても世の中可愛い子はたくさんいますからね〜」
「え……いや。あの……」
あまり人付き合いをしてこなかったからか、こう言うときに何て返したらいいのかわからない。
「俺はぽっちゃりしてるくらいの方が健康的で可愛くていいと思うけど」
思ったまま伝えると周りにいた友達が口々に俺を非難してきた。
「ひどっ。なにも本人にぽっちゃりだなんて言わなくても良くない? デリカシーにかけてるわ」
あ、そんなものなのか……。
俺は悪い意味でなく、本当に可愛らしいと思ったから言っただけなのに。ガリガリに痩せてるよりよっぽどかいいと思うんだけど。
「ヤダ、本当のことだからいいの。ありがとね」
慰めてくれてた友人に笑って返す彼女はなんとも思っていなさそう。でもそう見えるのは俺だけなのだろうか。傷つけてしまったのだろうか。
「ごめん」
俺が頭を下げると彼女は首を横に振った。
「ううん。別に気にしてないよ。気にしてるなら食べてないし」
「そっか」
女性陣はやや非難めいた表情で俺をみていたが、彼女自身は本当に気にしていなさそうでちょっと救われた。
きっと彼女たちは人の見た目をどうこういう前に自分の見た目を直せよ、と思われているんだろうなと思った。