年下の彼は甘い甘い鬼
好きと初めてのキス



「お酒強いね?」


「オネエサンも」


ほろ酔いどころかガッツリ飲んだのも久しぶりで、帰りはヒロに支えて貰った


「オネエサン先にお風呂に入って」


「え〜。ヒロが入って」


「じゃあ一緒に入ろっか」


「いえ、先に入らせて貰います」


「クッ、オネエサンおかし〜」


酔っ払いはシャワーで済ませようと先に入らせてもらうことにした


何もかも大きくて豪華なヒロの家の中で唯一


シンプルながらも機能が充実しているバスルーム


脚を伸ばして肩にお湯をかける機能は天国に来たかと思うほどリラックスできる


それを今夜は我慢してシャワーにした

シャワーといえども侮るなかれ、お湯をナノサイズに細かくて
汚れに強く肌に優しくなっているそうだ


「慣れちゃダメ」


一時の夢物語としてアパートが見つかる頃には気持ちを切り替えなきゃ


パジャマに着替えてリビングルームに顔を出すと、ヒロはソファの上で眠っていた


「ヒロ。風邪ひいちゃうよ?」


サラサラの髪を撫でてみれば、ヒロの目がパチっと開いた


「・・・っ」


「フフ、オネエサンか〜わい」


「キャァ」


腕を引かれたことに驚いているうちに、目の前にはヒロの顔があった


ソファに押し倒されている状況に頭が追いつかない


「オネエサン?」


ヒロとの距離はあと十センチ


一ミクロンの余裕もない癖に、美味しく飲んだビールの所為か気持ちが大きくなっていて

私の顔の脇に両手を付いて真っ直ぐ見つめるヒロの頬に触れた


冷たい


あんなに飲んだのに



「ヒロ」



私の手の熱が移ればいい




「オネエサン」



二度目の呼びかけに、そっと目を閉じた



頬の冷たさと対照的に


触れた唇は熱くて


初めてのキスに五感が研ぎ澄まされる



触れては離れを繰り返すそれに



息を止めて



次を待つ僅かな間に




「オネエサン大好き」



甘い囁きが届いた







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