元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
 オリバーの言葉に、ヘンリエッタはアッと思った。そうだ、たしかに、イリスレインを殺せば、ユリウスの愛情の向かう先はなくなる。そうしたら自動的に、ヒロインであるヘンリエッタが愛されるじゃないか!

「さすが、オリバー様! ありがとうございます! 私、がんばります!」

 母が教えてくれた、ヘンリエッタの立ち絵のひとつであるぎゅっと両手を握りしめたポーズをとる。かわいいかわいい、とオリバーが笑ってくれて、ヘンリエッタも嬉しくなった。
 牢に母を残していくのは心配だが、今もぶつぶつ何かを言っている母は自分で動いてくれないのだからしょうがない。
 きっとユリウスを連れて戻ってくるわ、と言い残して、ヘンリエッタは牢を出た。
 オリバーの、琥珀色の目が三日月の形に細まって、怪しい光を宿したのを、ヘンリエッタは知らなかった。

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