元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

第十三話 誘拐

 パーティーのあと、レインは興奮で火照った頬をあおぎながら、自室から中庭に出た。
 もう身支度を整えて寝るだけなので使用人たちは下がっている。

 けれどレインはなかなか眠れなくて、ガウンを羽織って夜風に当たりに来たのだった。
 穏やかな風が頬を撫で、レインの薄青い髪を柔らかく揺らす。

 今日のパーティーを思い返しながら、レインは静かに息をついた。
 今日は今まで生きてきた中で一番勇気を出した日かもしれない。

 レインから陽光石の使用用途を何も知らされていなかった女官長のベルや元乳母のチコは、泣きながらレインの無茶を叱ったが、レインが自分の意思で決めたということを最後には尊重してくれた。
 もちろん、失明するかもしれなかった、ということには最後まで怒っていたが。

 ユリウスも、心配しながら、レインの選択をほめてくれた。そこにレインへの気遣いを感じて、それが嬉しかった。
 レインはそっと胸を押さえた。
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