元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 親が社交界でどのような立場にいるかでグループができ、その中で交流する。仲のいい悪いも実家しだいだ。いうなれば、ここは小さな社交界なのである。

 そんなイシス学園の入学式に向かう道すがらのことだった。ユリウスと並んで歩くレインは注目の的だった。
 視界の端々から、あのアンダーサン公爵と歩いているのは誰だ、と囁く人が見える。
 やっぱり兄は優秀で美しい、素晴らしいひとなのだ。

 ユリウスと並んで歩いているだけで注目されるのを実感しながら――実は囁きの半分ほどはレインの美しさについてだったのだけれど、思い込みゆえにレインはそれには気付かなかった――レインは歩く。その時だった。

「おっと、ごめんね……うわッ」

 広い、学園の正門で、きらびやかな容姿をした金髪の少年が、レインにぶつかりそうになったのだ。
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