誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「は?お前らな、主役抜きでやってんの意味わかんねーから!」


その時教室に帰って来た皇輝。

皆はドアに注目し、笑った。


「いやだって、主演男優賞で忙しそうだったから」

「そうそう、イケメン俳優現るってさ」


劇が終わって、私達が片づけを追えるまでの間、

彼が何をしていたかというと、後輩先輩同級生のたくさんの女子との写真撮影会。


王子の衣装を脱ぐ前にと殺到した大量の女子たちに、囲まれてその対応に追われていたのだ。


憎しみのこもった友達たちに言われ、皇輝は苛立ちを顕にしてため息を吐いた。


「あー、馬鹿にしてんだろお前ら。俺のジュースは?」

「俺らが飲んじゃいましたー!!」

「は?まじで!?」


信じられねーと体で表現するように、うなだれる皇輝。


だけど、しっかり彼の分のジュースは取ってあって、

私はそのジュースのある教卓付近に座って話していたので、思わず声を掛ける。


「こっちにあるよ」


私の声に、皇輝はすぐに振り返って嬉しそうに、駆け寄って来た。


「だよな、やっぱお前らいい奴!」


単純な彼に、クラスメイトは呆れたような笑顔を見せ、クラスはまた良い雰囲気に包まれた。
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