【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

まるでわたしを気遣うように、ゆっくりとした足取りで藍くんが歩き出す。


「お、重くない?」

「全然」

「重かったら言ってね……! すぐ降りるから!」

「だから大丈夫だって」


言い合っていると、ようやくいつものペースを取り戻してきた。

発情も徐々に収まっていくのがわかる。


ほっぺを藍くんの背中にくっつけると、ほのかなムスクの甘い香りが鼻をつき、心臓の音が聞こえてくる。

とくとくと控えめに鳴る心臓の音を聞いていると、自分の心が凪いでいくのがわかる。

藍くんに触れて、こんなにも安心するのは初めてだった。

この温もりにすべてを委ねてもいいとさえ思った。
< 76 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop