【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
自然と心の内からこぼれるように、ぽつりとお礼の言葉が口をついて出る。
「ありがとう、藍くん。助けてくれて……」
「ほんとお前は危なっかしいからな。仕方ないから、運命の番が現れるまでは俺が面倒見てやるよ」
そう言ってふわりと微笑んだ気配が、風に乗って伝わってきた。
こんなに近くにいて身体は触れ合っているのに、どんなに手を伸ばしてもその心には届かないような気がして。
わたしが運命の番だと思える人と出会ったら、わたしと藍くんの関係はどう変わるのだろう。
その時がきたら藍くんは、まるで風のように、その心を掴めないまま消えてしまいそう。
そんな予感に、ほんの少し、寂しいと感じてしまったわたしは多分どうかしている。