【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

「――以上が、わたしがここでひとり暮らしをしてる理由、です」


ぽつぽつとこぼしていた声を閉じる。


わたしにとっては仄暗く思い出したくもない過去だった。

だけどすべてを話し終え、なぜか心は重い荷物を手放したように軽かった。

家族の話は、これまで友人にもしたことがなかったけど、もしかしたらずっとだれかに聞いてもらいたかったのかもしれない。


でも話が途切れ、代わりにやってきた静寂に、わたしは数秒前に感じたことを撤回する。

わたしはすっきりしたけれど、すっかり藍くんのことを置き去りにしてしまった。

聞かれたからとはいえ、突然こんな話を聞かされたら、また迷惑でしかない。


「なんて……。重いよね、ごめん」


できるだけ空気を軽くするように、自嘲気味な笑みを浮かべる。
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