The previous night of the world revolution8~F.D.~
その名前を聞いて、もっとも動揺したのは、勿論。

「…!ルシファー…。ルシファー、だと…?」 

そのルシファーの姉である、ルシェだった。

ルシファー・ルド・ウィスタリア。

知る人ぞ知る、今は失われた…この世にいない人物の名前だ。

その人物は、今はルレイア・ティシェリーと名を変えている。

変えたのは…名前だけではない。

「本当に…そう言ったのか?本当なのか…!?」

我を失ったルシェは、部下に掴みかかるようにして聞いた。

「おい、ルシェ。落ち着け」

アドルファスがたしなめたが、ルシェは血相を変えたままだった。

「ルシファー…ルレイアが犯人だと言うのか?あいつがそんなこと…!」

「落ち着けって。まだそうと決まった訳じゃないだろ」

「っ…」

アドルファスに制止され、何とか部下に掴みかかるのはやめた…ものの。

ルシェは苦虫を噛み潰したような顔で、何とも釈然としないようだった。

その気持ちはよく分かる。

「で、ですが…殺害されたアジーナ女史は、確かに電話口でルシファー殿の…いえ、ルレイア殿の名前を口にしたんですよね?殺される…と」

と、ルーシッドが尋ねた。

「は、はい…。電話を受けた執事が…確かにそう証言していました」

ふむ。

「ならば、間違いはないだろう」 

「犯人は決まったようなものだな」

五番隊隊長のアストラエア、七番隊隊長のフレイソナが続けて言った。

「その香水瓶がここに落ちてるのも、奴が落としていったものと考えれば辻褄が合う」

「だが…動機は?ルレイア殿が…サイネリア家の当主の命を狙う理由が何処にある?彼には何も…」

六番隊隊長のリーヴァが、そう言いかけたが。

…動機なら、すぐに一つ思いつく。

「動機はある」

「…オルタンス殿?」

「アジーナ・ミシュル・サイネリア卿は、帝国騎士官学校の前理事長だ」

「…!」

それだけで、その一言だけで、皆気づいたらしい。

そう。…それが動機だ。

「ま…まさか…ルレイア殿が帝国騎士官学校に在籍していた頃の…?」

「そうだ」

そして、上級貴族の当主であるアジーナ女史が、わざわざ帝都を離れ、このような僻地の別荘に引きこもっていた理由でもある。

ルレイア・ティシェリーが、闇に堕ちるきっかけとなった最初の出来事。

それは、帝国騎士官学校で受けた、壮絶ないじめだった。

再三周囲に助けを求めたルレイアを、学校側は黙殺し続け、事件を隠蔽した…。

結局、何年も経ってから…ルレイア自身の口によって悪事は暴かれ。

帝国騎士団と共に、帝国騎士官学校もまた、世間の批判に晒されることとなった。

その結果、当時帝国騎士官学校の理事長を務めていた、アジーナ女史も責任を追及され、理事長を辞任。

帝都にも居づらくなったのか、こうして辺境の地にある別荘に移り住み、半ば隠居生活を送っていた。

女史としては、理事長を辞任し、自らも帝都から去ることで、反省の意を示したつもりだったのだろう。

だが、その程度で犯した罪が消えると思ったら、それは間違いである。
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