The previous night of the world revolution8~F.D.~
ーーーーー…一方、その頃。

ルレイアと離れさせられた俺は、ルシェ、アストラエアと共に、第二取調室で尋問されていた。

そこで、ルシェの口から聞かされた。

ルレイアが、昨夜起きた殺人事件の容疑者として疑われていると。

自分で聞いたことが、信じられない思いだった。

…馬鹿な。

「ふざけるな…。ルレイアじゃない。ルレイアは何もしてない」

「昨夜は何処で、何をしていた?」

「…それは…」

…『青薔薇連合会』本部の俺の執務室で、こたつに入りながらおでんとアイスクリームを食べてた。

と、はっきり言いたかったが、それは何だか…その…恥ずかしかったので。

「別に…いつも通り、『青薔薇連合会』にいたよ」

何処にいたのかだけ言って、何をしていたのかは言わなかった。

「他の幹部達とも一緒にいた。何ならあいつらにも聞いてみるか?」

皆、口を揃えて同じことを言うと思うぞ。

しかし、アストラエアはそんな俺の証言を鼻で笑った。

「マフィアの言うことなど、信じられるものか」

…何だと?

「…だったら、俺に話を聞くこと自体が間違ってるだろ」

俺もルレイアも、マフィアの幹部なんだから。

信じられないって言うなら、尋問の必要はない。

「一方的に俺とルレイアに罪を着せろよ。お前らの得意分野だろ?…無実の人間に、罪を押し付けるのは」

かつてルレイアにそうしたように、また俺達に冤罪を押しつければ良い。

俺は別に良いぞ。ルレイアと一緒なら…別に怖くない。

すると。

「そんなつもりはない。公平に、話を聞くつもりだ」

ルシェはアストラエアを睨むように一瞥して、そして俺に向かってそう言った。

…公平だと。

お前が言うと、皮肉そのものだな。

その公平さを、何故ルレイアの時に見せてくれなかった?

「済まない。気を悪くせずに、知っていることを全部話して欲しい」

俺は、ハナからそのつもりだよ。

「…そもそも、昨日殺人事件が起きたっていうことさえ初耳だ。一体何処で、誰が殺された?」

「殺されたのは、サイネリア家の当主だ」

「…サイネリア家…?」

博識なルレイアと違って、俺はその名前を出されても、全然ピンと来なかった。

聞いたことがある…ような…。

でも、「当主」って言うからには、多分貴族の家柄なんだろう。

一般家庭では、「当主」なんて概念はほとんどないもんな。

「…貴族の家か?ルレイアとどういう関係だったのか知らないが…」

「サイネリア家の当主…アジーナ・ミシュル・サイネリア卿は、ルレイアが帝国騎士官学校に在籍していた当時、学校理事長だった方だ」

ルシェのその説明で、俺は全てを理解した。

そして、堪え切れないほどの衝動に駆られた。

今すぐこの部屋を出て、ルレイアの傍に行きたいと思った。

今、隣の部屋で俺と同じことを聞かされているに違いないルレイアが。

思い出したくない、辛い過去を思い出して、苦しんでいるに違いないと思うと。

俺は、いてもたってもいられなかった。
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