The previous night of the world revolution8~F.D.~
…それで?

「こんなものが見つかったから、何だって言うんです?」

自分でもはっきり分かるくらい、声が低くなっていた。

「こちらが、発見当時の殺害現場の写真だ」

次に、オルタンスは凄惨な殺害現場の写真を見せてきた。

血を見慣れない一般人なら、写真だけでも卒倒するレベル。

辺り一面に血が飛び散り、目玉の飛び出したアジーナ・ミシュル・サイネリアの死体が転がっている。

…無様な死に様だことだ。

あの女に相応しい。

「この写真に見覚えは?」

「ある訳ないでしょう」

今初めて見ましたよ。

…でも、ようやく理解した。

わざわざ俺を呼び出してまで、こんなことを聞いてくる理由が。

つまり、俺は…。

「殺人事件の容疑者って訳ですか。俺がこの女を殺したと疑われてるんですね」

「あぁ。その通りだ」

オルタンスはオブラートに包むことも、言葉を濁すこともせず。

素直に頷いて、俺を疑っていることを認めた。

…潔いじゃないか。

そして、舐められたものだ。

「…俺が、こんな下手くそな殺し方をするとでも?」

写真を見れば分かる。

これは素人の殺し方だ。

部屋中に血が飛び散っている。一撃で仕留め損なって、二度、三度とナイフを突き刺したのだろう。

俺だったら、絶対にそんなヘマはしない。

憎い相手を殺すと決めたなら、こんな「優しい」殺し方はしない。

「俺が本気で殺したいと思ったら…もっと散々痛めつけて、地獄のような拷問をして…生まれてきたことを後悔させながら殺しますよ」

…他の「復讐相手」に、そうしたようにな。

「…あぁ。それは俺も分かってる」

と、オルタンスは頷いた。

「俺は、お前が犯人だとは思ってない」

…。

「お、おい。オルタンス…。そんなはっきり…」

「お前もそうだろう?アドルファス。ルレイアが犯人だと思うか?」

「…それは…。…いや。俺だって、ルレイアが犯人だとは思ってない」

あっそ。

俺を信じてくれてありがとう…なんて、言うつもりはない。

当然のことだ。それくらい分からないようじゃ、帝国騎士団の隊長なんて務まらないだろう。

「それでも、お前が疑わしいと推測する、決定的な証拠があるんだ」

「…証拠?それは何です」

「殺されたアジーナ女史自身の証言だ。彼女は死の間際、電話を取ってこう告げた。『ルシファー・ルド・ウィスタリアに殺される』とな」

「…」

…へぇ。

あの女、やっぱり俺の手で殺してやるべきだった。

死んでなお、俺を厄介事に巻き込むとは。
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