The previous night of the world revolution8~F.D.~
「ルレイア師匠が帝国騎士官学校にいた頃…学園の理事長だった人です」

俺の代わりに、ルーチェスが説明してくれた。

「…!学園の理事長…って…。それじゃ…昔、ルレイアをいじめてた人の…」

「シュノ!それは…」

「あっ…」

思わず口を滑らせてしまったシュノさんを、ルルシーが咎めた。

その時の、シュノさんの申し訳なさそうな顔。

こっちまで申し訳なくなってきますよ。

「ご、ごめんなさい。ルレイア…。私…」

「…いいんですよ、気にしないでください」

そのくらい、もう覚悟はしてます。

強がりじゃないですよ、本当に。

今はルルシーが傍にいてくれてるから、平気です。

「その通りです。俺が帝国騎士官学校にいた頃…俺がいじめられているのを知りながら、見て見ぬ振りをしていた人です」

「…おまけに、事が発覚した後、責任を追及されて帝都から逃げ出して…地方の別荘で優雅に暮らしていた女だ」

ルルシーったら。非常に刺々しい。

まぁ、仰る通りですけども。

「そいつが殺されたっての?やったじゃん!悪は滅びるんだな。ざまぁ」

両手をパンと鳴らして、大喜びのアリューシャ。

こういうところ、一緒に喜んでくれるのがアリューシャの良いところですよね。

「そうね…。もう気にすることないのよ。その人は死んだんだから。もうルレイアを煩わせることはないわ。大丈夫よ」

シュノさんも、俺の手を取ってそう言ってくれた。

…ありがとうございます。

「でも…そうは行かないんですよ。ルレイア師匠は、その当主殺害事件の容疑者にされてるんです」

「へ?何で?」 

「…どうして?何でルレイアが殺したことになってるの?」

ルーチェスの説明に、アリューシャもシュノさんも首を傾げる。

…それは…。

「まず、動機がはっきりしてるからだろう。ルレイア先輩には、帝国騎士官学校時代の恨みがあるからな。怨恨目的と思えば辻褄は合う」

ルリシヤが解説。

さすが。分かってらっしゃいますね。

俺が説明するまでもない。

「そんな…!それだけの理由でルレイアが疑われるの?そんなのおかしいじゃない!他にもその人のこと、恨んでる人がいるかもしれないわ」 

全くですよ。

あんな陰険ババァ、何処で誰の恨みを買っててもおかしくない。

「恐らく、それだけじゃないんだろう。事件からまだ半日も経ってないのに、容疑者としてルレイアに白羽の矢が立ったってことは…。現場に、それらしい証拠でも見つかった、とか?」

「あるいは目撃情報ですね。ルレイア師匠らしき人物を目撃した、という情報でも寄せられたんでしょう」

「それとも、被害者のダイイングメッセージでも見つかったか?」

アイズ、ルーチェス、ルリシヤの順で言った。

…三人共、鋭過ぎますね。

俺、もう全然解説の必要ないじゃないですか。

「…それが…」

俺はルルシーと顔を見合わせ、それから話し始めた。

アジーナ・ミシュル・サイネリアの部屋で見つかった、香水瓶の破片と。

そして、俺が疑われることとなった一番の証拠…。アジーナが最後に電話で残したという言葉について。
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