The previous night of the world revolution8~F.D.~
ルルシーは、露骨に舌打ちをした。

「ちっ。避けるなって言ってるだろ!」

避けますよ。当たり前じゃないですか。

俺だって痛いのは嫌なんです。

「殴ることないでしょう、ルルシー!俺だって真剣に考えて、」

「名前の響きだけ変えても意味ないんだよ。その由来を変えろ!」

えっ。駄目なんですか?

折角、俺が素敵な名前を考えたのに。

「ほら、ルルシー。子供が見てる前ですよ。子供の前で暴力は良くないと思います」

「うっ…。それは…まぁ、そうだな…」

ルアリスのメスガキ1号が、こちらを不思議そうな顔でじっと見ていることに気づき。

ルルシーは、2発目の鉄拳を控えてくれた。

そうそう。それで良いんですよ。

「…でも、それはそれ、これはこれだぞ。もっと真面目に考えろ」

「心外ですね。真面目に考えてますよ」

折角、俺が良い名前を考えてあげたっていうのに…。何が不満なんですかね。

いっそ本人に選ばせますか。タロー、ハナコ、ノワール、メランの名前をそれぞれカードに書いて。

それを本人の前に出して、選んだものに決定する。
 
そうすることによって、将来子供が「何でこんな名前にしたの!?」と怒ってきたとしても。

「あなたが自分で選んだのよ」と言って一喝出来るじゃないですか。

俺って頭良い。

それなのに、ルルシーは。

「…もう良い。お前が真面目に考えないなら、俺が代わりに考えるよ。俺はルレイアほどネーミングセンス良くないけど…黒よりマシだろ」

ちょっとルルシー。そりゃないですよ。

分かりましたって。

「もう…。分かった分かった。じゃ、『スズラン』ちゃんにしましょう」

「…え?スズラン?」

ご存知の通り、花の名前です。

あの白い可愛らしい花ですよ。

「可愛い名前ですけど…。それ、由来は?」

と、セトナさんがはらはらした表情で尋ねてきた。

何ですか。そんな焦った顔しなくても。

また「黒」とか、「闇」とか言うとでも思ったんですか?

俺だって真面目に考えようと思ったら考えられるんですよ。

「花言葉ですよ。スズランの花言葉は、『純粋』、『幸せの訪れ』なんです」

「…!」

その可愛らしい花びらと、この花言葉から、贈り物に選ばれることも多いとか。

名前の響き自体も可愛いですしね。舌で転がすような響き。

「スズラン…。スズランちゃん。可愛いですね」

「うん…。呼びやすいし、花言葉の意味も素敵だし…。良いと思う」

スズランと命名されたルアリスの次女は、自分の名前が決まったことも知らず、呑気に眠っている。

「…ルレイア…」

「…何ですか、ルルシー」

また怒るんですか。もっと真面目に、とか。

しかし、そうではなかった。

「お前…。真面目に考えようと思ったら考えられるんだな…。…良い名前じゃないか…」

「もー…。ルルシーったら俺を何だと思ってるんですか…」

名前は大事ですからね。嫌な名前つけられたら、一生背負って生きることになる。
 
俺もかつて、自分の名前を変えた身ですから。その辺はよく分かってるんですよ。
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