The previous night of the world revolution8~F.D.~
…でも、まぁ。

ルルシーがそこまで言ってくれるのは、俺も嬉しいですね。

だからこそ、ルルシーを傷つけてしまうようなことをするのが、非常に心苦しい。

「…ルルシー。勘違いしているのかもしれませんが」

「俺が何を勘違いしてるって言うんだよ?」

「怒らずに聞いてくださいよ」

ちょっと冷静になりましょう。冷静にね。

頭に血が上ってたんじゃ、何を言っても耳に入りませんよ。

「確かに俺は、『青薔薇連合会』を卒業します。マリーフィアに手引きしてもらって、ウィスタリア家に戻り、それからマリーフィアと結婚してカミーリア家に婿入りするつもりでいます」

「…」

そんな怖い顔しないでくださいって。

「ですが、それは一時的なものです。『ローズ・ブルーダイヤ』をカミーリア家の宝物庫に戻したら、その目的を果たしたら、また『青薔薇連合会』に戻ってきます」

俺がそう言った瞬間、ルルシーの険しかった顔色が変わった。

…やっぱり、何やら誤解していたようですね。

「ほ…本当に?戻ってくるのか…?俺のところに…」

「…当たり前じゃないですか」

本気で、俺が裏社会から足を洗うと思ってたんですか?

それは無理ですよ。いくらなんでも。

俺が闇から抜け出そうとしても、闇は俺を解放してくれないでしょう。

それに、何より。

ルルシーが俺と離れがたいと思ってくれているように、俺だって。

「俺だって…ルルシーの傍を離れたくありませんよ」

ルルシーは、俺の心臓ですから。

心臓がなくなったら死ぬでしょう。

それと同じ。俺だってルルシーと離れたくない。

「必ず戻ってきます。役目を終えたら、必ず、またあなたのもとに…」

「…ルレイア…」

「だから、俺が戻ってくるまで待っててください。『青薔薇連合会』を…俺が戻ってくる場所を守ってください」

俺も、『青薔薇連合会』を守る為に力を尽くしますから。

その為に、またあの忌まわしい家に戻っても構わないと思えた。

『青薔薇連合会』は、ルルシーの隣は、俺にとって、それだけ大切な場所なのだ。

「…はぁ、もう…」

思いっきり脱力したルルシーは、その場に座り込む代わりに。

堪えきれないという顔で、なんと、俺を抱き締めた。

えっ、マジですか。

唐突に、そういうご褒美くれます?

「あのな、お前…。そういうことなら、最初からそう言えよ…」

「いやぁ…言おうとしたんですが、その前に激おこのルルシーにキレられまして…」

「そうだったな…。…早とちりした俺が悪い…」

「俺も言葉足らずで済みません」

ルルシーの肝を冷やすつもりはなかったんですけどね。

「…帰ってくるんだな?ちゃんと」

「勿論です」

俺だって、ウィスタリアの名前を名乗るのは御免だし。

カミーリア家の婿なんて、絶対に願い下げ。

俺が結婚する相手は、ルルシーのみと決まっている。

それ以外なんて、所詮演技。仮初めの関係でしかない。

マリーフィアには悪いけど、これが俺のやり方だ。

『青薔薇連合会』を守る為に、俺に出来る唯一の役目なのだ。
< 63 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop