社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 ここだけの話、早期退職は退職金に色づけされたようだ。本社のおわびの気持ちかもしれない。

「なんかさ、辞めるんなら真っ先に普通は私達だよね、どう考えたって……」

 私は卵焼きを口にしながら呟いた。斉藤さんが焼き鳥の串を私に向けてうなずいている。合併前日。久しぶりに斉藤さんと会って飲んだ。私達は女性の中間管理職のようなもの。

 会社をたたむとなれば男性管理職から色々頼まれて、結局事務方の仕事をまとめることになる。あちらに持って行くべき書類がや捨てるものは何なのか判別していた。めちゃくちゃ忙しかった。ボーナスが欲しいくらいだ。

「確かにね。あんなことがあったんだから、身の危険を感じたんだし、本来なら辞めて普通だよね。刑事事件にしないでくれって言われた事も含めて、口封じのために本社から多めに退職金出たりしたかもしれないよ」
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