社内捜査は秘密と恋の二人三脚

最終日の不安

 明日から本社へ出社する。配属先は行ってから発表があるらしい。

 氷室商事は自社ビルだ。悟の言うことも一理ある。小さな財団からこんな大きな本社へ入ることが出来る。会計部じゃなくても、満足すべきなのかもしれない。財団の男性が本社に異動したら栄転だよね、絶対。

 結局、会計部の女子は三分の一が辞めた。でもそれは財団の他の部署のなかでは少ない方。いろいろな噂が飛び交い、ネガティブな噂に踊られやすい女性は、皆転職していった。

 財団自体の良くない噂もあり、氷室商事に対する不信感もあったと思う。結局本社の役員とうちの社長が関係していたとなると、本社は何をしていたんだということになる。氷室商事が信じられず転職したいという決断が間違っているとは到底言い難い。

 そして、あの財団は元々音楽や美術が好きだから入社したという人が大半だった。かくいう、私もそうだ。それが仕事に関係してこないなら辞めるという決断もこれまた間違っていない。だから、誰も止めることはなかった。
< 284 / 385 >

この作品をシェア

pagetop